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日本経済新聞とのインタビュー

石川潤によるファビオ・パネッタとのインタビュー

2021年5月26日

――ユーロ圏経済の現状をどう分析していますか?

「あまりに早すぎる勝利宣言には注意が必要というのが、昨年の教訓だ。昨年の夏には前向きなデータを受け取り、誰もがパンデミックの終わりを祝っていたが、それがどうなったか。経済は二番底に落ち込んでしまった」

「いま、見通しは改善しつつある。ワクチン接種の加速や堅調な海外の需要、域内ではEU(欧州連合)復興基金に支えられ、年後半の反発を予想している。旅行者数の回復も数カ月より長く続くことを期待しており、漸進的な正常化の象徴になるだろう」

「ただ、心にとめておくべき2つのポイントがある。第一に、回復は不完全ということだ。ユーロ圏の域内総生産(GDP)はコロナ危機前より5.5%低い水準で、危機前の成長軌道のさらに下にある。これが意味するのは、パンデミックで失われた数百万の雇用がまだ回復していないということだ」

「第二に、経済は依然として金融・財政政策が供給する酸素に頼っている。我々は自律的な成長からはかなり遠いところにいる。たとえば、雇用維持の枠組みが引き続き重要な役割を果たしている。ユーロ圏では失業者や求職意欲を失った人、そのような枠組みの対象となっている人がおよそ17%いる。表面上の失業率の2倍だ」

「経済がこのひどい時期とそれが残した本当の打撃から抜け出すには時間がかかる。慎重な消費行動と高い水準の予防的な貯蓄から分かるように、多くの不確実性もある。もしあなたの雇用が政府に支えられているならば、生活はできていても、将来の雇用に当然不安を抱くだろう」

「そのような状況で、早すぎる政策支援の撤廃は、回復が自律的になる前にその息を止めてしまうリスクがある。不安定さが増し、さらに需要を圧迫することになる」

「だから我々は新しく入ってくるデータをしっかり監視し、危機からの脱却が力強く持続的な回復に支えられていることを確認しなければならない。産出量や雇用、インフレのギャップが、パンデミック局面を本当に乗り越えたのかを判断するための重要な変数になる。ギャップは徐々に狭まっていくだろうが、まだ満足できる水準からは遠い」

――我々はまだ危機を脱したわけではないと。

「まだだ。まったく抜け出していない」

――インフレ見通しはどうですか。ユーロ圏の物価上昇率は4月に前年比1.6%まで上昇しました。インフレが再び戻ってきたようにも見えます。

「我々がいま見ているのは、国際的な商品価格の値上がりやドイツの付加価値減税終了などによるつかの間の物価上昇だ。一時的なこぶとなるだろう。自律的でなく、域内要因によるものでもないため、来年まで続くことはない。いずれにせよ、主に域内のサービス価格によって動く基調的な物価上昇は4月でも0.7%ととても低くとどまっている」

「さらに先を見ると、我々の3月の予想では、中期的な物価上昇は引き続き弱い見通しだ。2022年で1.2%、23年で1.4%でしかない。米国で起きていることから推し量るべきでない。我々は同じような、強く持続的な物価上昇圧力を生み出す需要の急増や労働市場の逼迫を予想していない。最近の物価上昇に関する調査はこうした見方と整合的だ」

「心配なのは、物価上昇が我々の目標である2%を大きく下回り続けそうだという事実だ。あまりに長い期間、物価上昇目標を達成できなければ、我々の信認にも響きかねない。パンデミックによる収入の急減を相殺するため、民間および公的債務の比率が高まっている。あまりに低い物価上昇は、債務の実質的なコストをいっそう重くする」

――なぜ物価2%の達成にそんなに時間がかかるのですか。日本化と呼べるでしょうか?

「私の見方では、日本化というのは間違った表現だ。それが表すのは、インフレ期待がとても低い水準に固定され、取り除くことが難しくなっている状況だ。欧州は違う。長期の市場のインフレ期待はまだ1.6%程度で、最適とはいえないが、日本とは状況がかなり違うことを示している」

「我々の問題は巨大なショックの連鎖だ。まず(2008年の)金融危機があった。それから欧州債務危機。そしていま、パンデミックだ。しかし欧州中央銀行(ECB)は物価上昇を目標の水準に戻すことができる。我々は物価上昇を2%近くまで押し上げる道具を持っている。そして、ECB理事会には現在予想される物価上昇の水準では満足できないという全体合意がある」

「物価上昇の水準は中期的には中央銀行によって決められるというのは、私にとっては明らかだ。我々は、目標に到達するまで力強く行動し続け、自分たちの信認を守る必要がある」

――ECBはパンデミック対応の緊急買い取り制度(PEPP)による債券購入を、6月以降も現在と同じペースで続けますか?

「緊急買い取り制度の目標は良好な金融環境を維持することだ。それは公的、民間部門の支出を支えるうえで重要だ。需要がまだ弱く、基調的な物価上昇が極めて低い水準にあるなか、政策による支援は引き続き必要不可欠で、金融環境の時期尚早な引き締めは避けなければならない。政策による刺激が少なすぎてしまうリスクはまだ高い」

「私の見方では、物価の基調が上昇傾向となり、我々の目標に沿った物価上昇とインフレ期待をもたらすような、物価上昇圧力の持続的な増加があって初めて、我々の買い取りの縮小が正当化される。しかし、これは3月に予想したものではない。それ以降も、物価上昇の軌道を押し上げるような金融環境や経済見通しの変化は確認していない」

「実際には、今年の初めに観察した金利上昇のあと、さらに望ましくない金利上昇に直面している。金融環境は引き締まっている。この環境で、我々が持続的で見逃せない為替相場の上昇に見舞われたことは驚きではない。為替相場の上昇が続けば、物価上昇圧力は弱まってしまう。我々は6月の会合で、特に中期的な物価上昇の新しい予想に照らして、こうした傾向の持つ意味について議論する」

――緊急買い取り制度を予定通り2022年3月に終わらせるのは難しそうです。

「22年3月にどうするかをいま推測することはできない。まだ1年近く先であり、高い不確実性を考えれば、いまは1年が1世紀のような状況だ」

「忘れてはいけないのは、無条件に3月に買い取りを終えるとは言っていないということだ。理事会が決めたのは、緊急買い取り制度での資産購入を少なくとも22年3月末まで、いずれの場合でも、コロナ危機が終わったと判断するまで続けるということだ。我々の目的はコロナ危機を終わらせるために十分なだけ経済を刺激することにある」

「経済の回復が6カ月後、あるいは9カ月後にどうなっているか、物価上昇やインフレ期待に何が起きているかを見てみよう。覚えておくべきは、コロナ危機が終わったとしても、物価上昇がなお目標とかけ離れており、2%目標に戻すために政策手段を用いる必要があるということだ。この点では、我々はパンデミック中やその後、どのように政策金利や資産購入を扱うかという、はっきりとした先行き指針(フォワード・ガイダンス)を定めている」

――オランダ中銀のクノット総裁は緊急買い取り制度から、より従来型の支援への移行を示唆しています。この考えをどう思いますか?

「購入量を増やすか減らすか、緊急買い取り制度を延長するか終わらせるかの決定は経済状況次第の合議制による決定だ。条件となるのは、力強い回復と持続的なインフレ圧力の証拠を確かめることで、我々の目標に沿った物価上昇とインフレ期待をもたらすような物価の基調の上昇傾向がみられることだ。私の見解では、いまの状況では買い取りペースを落とすことは正当化できない。緊急買い取り制度の終了の議論は明らかに時期尚早だ。我々の決定は海外からの論調に左右されるべきではなく、ユーロ圏の説得力のあるデータによって導かれるべきだ」

――9月か10月まで待たなければいけませんか?

「経済と物価上昇の進展についてもっと明確になるまで待たなければならない。(物価の安定というECBの)使命を達成できると確信できるまでだ。これが意味するのは、まず、パンデミックの物価上昇への影響を中和すること。次に、物価上昇があまり遠くない将来に持続的に目標水準に達すると判断するまで政策措置を続けるということだ」

――ECBは今後数カ月で(中銀デジタル通貨である)デジタルユーロ導入を検討するための正式なプロジェクトを立ち上げるか判断します。すでにビザやマスターカード、アップルペイやグーグルペイがあるのに、なぜデジタルユーロが必要なのですか?

「大きな理由が二つある。第一に、人々はますますオンラインで買い物をし、電子的な決済手段を使うようになっている。もしこの傾向が続けば、現金の支払い手段としての役割は著しく低下する可能性がある。しかし、現金は中央銀行が発行する支払い手段で、市民との具体的な結びつきだ。公共財として安全な法定通貨を提供することは数世紀もの間、中央銀行の中核的な使命だった。これを続けていくべきだと考えている」

「第二に、欧州の小口決済市場が、欧州当局の規制上の監視から相対的に免れやすい、一握りの欧州外のプレーヤーに支配されることを避ける必要がある。これは競争やデータ保護を不十分にしかねない。欧州のデジタル決済手段がなければ、我々の金融主権は最終的に危うくなる」

「デジタルユーロはプライバシーを守り、消費者の選択肢を増やし、取引のコストを引き下げ、経済のデジタル化を支える。法定通貨が金融システムの中核にとどまることを確かにする。すべての市場参加者がデジタルユーロを利用して追加的なサービスを提供できるようにすることで、競争条件を整えることにもなる」

――米国のビッグ・テックは欧州の脅威だと思いますか?

「少数の非欧州企業がすでに、クレジットカードやオンライン決済のような、小口決済のいくつかの市場を支配している。将来、ビッグ・テックの役割が金融サービスの分野でかなり重要となれば、ほかの市場で起こっているように、プライバシーや競争、技術的な自主性へのリスクをもたらしかねない」

「デジタルユーロの導入は開かれた競争を維持し、技術革新を刺激し、欧州の自主性と金融の強靱さを強めるだろう」

――既存の銀行システムへの影響をどう考えますか?

「デジタルユーロは消費者にとって安全でリスクがなく、完全に流動性のある支払い手段を提供する。富の蓄積手段として制限がなければ、巨大な投資を引きつけ、銀行からデジタルユーロへの個人預金の大規模な移動が起きるかもしれない。これは特に危機の局面で、金融安定のリスクを高めてしまう」

「しかし、我々はこのリスクを避けるつもりだ。そのために2つの選択肢がある。一つは個人の利用者のデジタルユーロの保有を制限することだ。たとえば3000ユーロ(約40万円)を超えないようにする。これは銀行からデジタルユーロへの預金の流出を制限することになる。もう一つの可能性は(マイナス金利などの)懲罰的な報酬を一定額以上の保有に課すことで、デジタルユーロの大量保有を防ぐことだ」

「デジタルユーロはそれゆえ投資の一形態として機能するのではなく、法定通貨で電子的に支払いをするための効率的な方法を提供する。これは金融部門の不安定化を避け、金融仲介機能を守ることになる」

――ユーロ圏外でのデジタルユーロの使用や保有も制限するつもりですか?

「ユーロ圏外の居住者がデジタルユーロを手に入れられるようになれば、国境を越えた小口決裁で安全な手段を提供することになる。ただ、脆弱な途上国では、デジタルユーロがとても魅力的な投資形態となり得る。正しく設計されなければ(途上国などで)資金流出や通貨の代替を促し、金融の不安定化を引き起こしかねない。ユーロ圏外の居住者による入手や使用の条件はそれゆえ、過度に不安定な資金の動きや為替相場の変動を防ぐように設計されるだろう。ユーロ圏外の居住者の過度のデジタルユーロ保有を制限したり、意欲をそいだりすることがその例となる」

「いずれにせよ、設計や国境を越えた使用、相互運用性についての国際協力が、国際金融システムのリスクに対処しつつ、国境を越えた決済で中央銀行デジタル通貨の潜在的な利益を享受するためのカギとなるだろう」

――中国が22年までに中央銀行デジタル通貨を発行します。脅威を感じますか?

「中国当局はデジタル人民元を国内使用と小口決済のために設計すると発表している。彼らはデジタル時代の法定通貨の役割を守りたいと思っており、中国国内のビッグ・テックの拡大に対応している」

「長期的には、中銀デジタル通貨間の相互運用性を構築することが、国内の利益を強めることになり得る。国境を越えた決済をより簡単に、安く、効率化することになる」

――中国は競争相手ではなくパートナーになる?

「中央銀行はすでに二国間や国際フォーラムで協力を進めており、日米英、カナダ、スウェーデン、スイス、そして中国と連絡をとっている。我々は相互に学び合い、デジタル通貨の導入に関する問題の理解を深めることができる」

――デジタルユーロの発行はいつになりますか?

「我々は5年の期間を念頭に議論を始めた。5年間というのは、デジタルユーロの導入に必要な最低限の時間だろう。中国は8年前の13年にデジタル通貨の作業に着手した。スウェーデンは17年にeクローナに取りかかり、26年に導入できるかもしれないと言っている。そうした経験から分かるのは、デジタル通貨の導入には時間がかかるということだ」

――26年にはデジタルユーロを手にできますか?

「それが最短だろう。最初にゴールしようと急ぐべきではない。これは競争ではないのだ。デジタルユーロを導入してもうまく機能しなかったり、国内外で不安定な状況を生み出してしまったりするリスクはとれない。それだけ重要な変化なのだ。我々がデジタルユーロを発行すると決めるなら、それを正しくできるという確信が欲しい」

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